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現場審査で組織の不正は検出できるのか

JUGEMテーマ:ビジネス

 

組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「現場審査で組織の不正は検出できるのか」について。

 

先日、建築士や技術士(建設部門)、建築施工管理術者の有資格者がいる会議があり、雑談で「レオパレス21の界壁未設置問題など」について、質問してみました。

 

ご存知の方も多いと思いますが、ざっくりとこの問題を振り返ると、各メディアの報道では、以下の3つの建築基準法違反の疑いが指摘されています。

1)壁内の断熱材で、遮音性能を満たしていないものを使った(最大771棟)

2)外壁が、認定されたものとは別の仕様になっていた(最大925棟)

3)3階建ての天井の部材の量が、耐火基準を満たしていない(最大641棟)

 

つまり、火災が発生した際の延焼を抑える準耐火構造や防音性能を満たした天井裏や屋根裏になっていないわけです。

防音の問題は、「品質問題」だとしても「外壁仕様と天井部材の量については、準耐火構造上の問題なので、「命にかかわる問題」になりかねません。

 

報道では、

・そもそもベースとなる設計図書や施工マニュアルなど最初から図面にミスがあった

・その結果、個別の建物に、そのミスが反映された

ことが、大量の法令違反物件を生んだ原因といわれています。

 

ちなみに、レオパレス21は、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」を2008年12月24日に取得(現在は返上)しました。

・対象組織:株式会社レオパレス21建築事業本部

・認証範囲:レオパレス21シリーズの企画及び商品開発、設計及び工事監理、施工監理。

あずみ苑シリーズの施工管理

https://www.leopalace21.co.jp/news/2008/1225_544.html

 

そして、2018年12月11日付で、以下の理由で、認証機関に対しISO9001の返上の申し入れをしています。

【認証返上の理由】

界壁施工不備問題に起因する調査及び補修工事が完了していないため

 

さて、冒頭で話題にした「現場審査で組織の不正は防げるのか」について、業界仲間の建築の専門家たちに聞いてみました。

すると、

・外壁材に使用されていた発泡ウレタンが不適切なことは現場で建設資材を確認すればわかる

・外壁材はグラスウールを使用するのが常識だから、設計図書を確認すればわかる

・界壁の有無は、現場審査では意図をもって確認しない限りわからない

・遮音性能については、顧客(入居者)苦情が上がっているはずだからその対応を確認する

・法令を満たしているか否かは、建築確認記録のチェックぐらいしか審査ではしないから

・・・

といった意見を聞きました。

 

報道では、設計図書について、建築確認用の設計図書と、現場施工用の設計図書がそもそも異なっていた、という報道もあります。

たぶん、私であれば、現場施工用の設計図書と現場で使用されている建材の整合性はサンプリングで当然みますが、建築確認用の設計図書との整合性は、確認することがあったとしても、現場で設計図書と実際に使用されている建材に整合性があれば「問題なし」との判断をするでしょう。

つまり、「使用されていた建材が適切な建材か否か」までは、お恥ずかしいですが、たぶん、見切れないでしょう。

 

また、建築基準法など法令順守については、外形的には、建築確認記録で「合格」が出ていればマネジメントシステム認証としては「問題なし」との判断をするでしょう。

ただ、レオパレス21は、急成長してきた会社ですから、リスクとして「施工期間の短縮」「施工コストの圧縮」といった「他社と比較した経営努力」があるはずです。

したがって、「組織として無理をしていなかったか」、「現場に無理が生じて建築確認で露見しにくい不正をしていなかったか」という観点で審査を進めることは(結果論ですが)できたかもしれません。

 

建設に関する初期のISO取得組織の不正といえば、「某ビジネスホテルチェーン」の「ハートビル法違反」(2006年)が多くの人の記憶に残っている事件です。

当時の社長が記者会見で、

「障害者用客室つくっても、年に1人か2人しか泊まりに来ない」

「結局、倉庫やロッカー室みたいになっているのが現実」

「制限速度60kmの所を65kmで走ったようなもの」

といった発言をして大バッシングを世間から浴びました。

 

こうしたISO取得企業の不正がきかっけで、「審査員の力量管理」について認証機関に大号令がかけられた時代がありました。

その結果、例えば、建設分野でいえば、かつては「審査経験」「関連業務経験」などで審査を割り当てていた認証機関の多くが「建設業の業務経験」や「建築士など建設系資格有資格」でないと審査に割り当てられないルールに変更しました。

確かに、こうした審査員の力量担保は、第三者的にはわかりやすいし、また、前述したように現場審査で「設計図書通りではあるけど、あれ?おかしい」という点には気づける可能性があります。

ただ、その組織が置かれている業界環境や組織特性から「どのようなリスクがあるか」という観点については、「こうした外部の人に説明しやすい業務経験や関連資格の保有」よりも、ある程度の建設業の知識さえあれば「業務上のリスクを想像するセンス」の方が審査員の力量要素として大きい気がします。

 

それにしても、仮に審査で不正や組織の経営上のリスクがみつかっても、それは、審査を受けた組織には感謝されたとしても、公になることはありません。

ISO認証審査がこうした社会悪や企業リスクの未然予防に寄与している、ということを社会など外部にアピールできる方法論はないものかな、と思います。

そうでなければ、認証の価値がさらに低下していってしまう。。。と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ636号より)

 

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author:有賀正彦, category:ISOマネジメントシステム全般, 06:34
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