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アスクルの倉庫火災が拡大した原因と倉庫設計&火災報知器メーカーの環境側面

JUGEMテーマ:ビジネス

 

社会経済的ニーズとバランスを取りながら、環境を保護し、環境状態に対応するための組織の

仕事の仕組みに関する枠組みに、国際規格の環境マネジメントシステム規格(ISO14001)がある。

 

この環境マネジメントっステム規格の現行版であるISO140012015年版では、環境に影響を与える原因となる「環境側面」について、次のように規定している。

 

(以下、ISO14001:2015JIS Q 14001)より引用)

組織は、環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で,ライフサイクルの視点を考慮し、組織の活動、製品及びサービスについて、組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面、並びにそれらに伴う環境影響を決定しなければならない。

環境側面を決定するとき、組織は、次の事項を考慮に入れなければならない。

a) 変更。これには、計画した又は新規の開発、並びに新規の又は変更された活動、製品及びサービスを含む。

b) 非通常の状況及び合理的に予見できる緊急事態

組織は、設定した基準を用いて、著しい環境影響を与える又は与える可能性のある側面(すなわち、著しい環境側面)を決定しなければならない。

組織は、必要に応じて、組織の種々の階層及び機能において、著しい環境側面を伝達しなければならない。

(引用ここまで)

 

上記引用部分で、今回、取り上げたいのは、環境側面を決定する際に、

「非通常の状況及び合理的に予見できる緊急事態」

を考慮する点でです。

 

例えば、ある製造工場でモノを生産する際に設備を稼働させるとします。

その時、「非通常の状況」とは、組織の定義の仕方にもよりますが、一般的には、「月次点検、年次点検」といった場合や「設備の増設や改修」といった場合、「生産トラブルによる稼働停止と修理」というようなケースを指します。

 

また、「緊急事態」は、「設備の異常運転故障」にともなう「漏電や油漏れ、規制値を超える煤煙や汚水の発生、火災」や「地震、水害などによる近隣住民への影響」などが挙げられるでしょう。

 

現行版は「リスクベース思考」ですから、決め打ち的に、「当社における管理すべき非通常時と緊急時の環境側面はこれとこれです」と環境側面を恣意的に決定するのではなく、「非通常時、あるいは、緊急事態の環境側面とは何か?を洗い出して、その上で、組織が規定した基準でふるいにかけて、管理するべき環境側面(=著しい環境側面)を決定しましょう」ということなのです。

 

余談ですが、正確な統計データではありませんが、感覚的には、2015年版以前から、「非通常時の環境側面と環境影響評価」は、ISO14001によるマネジメントシステム構築をしている組織の多くは、環境側面を洗い出しする際に概ね考慮していました。

しかし、緊急事態は、緊急事態の結果系から決め打ちして、例えば「油漏れと火災の発生が緊急事態でそれに対する対応手順はこれです」というような組織がほとんどで、「油漏れと火災だけで本当に大丈夫なのか?」の議論や仮に「結果として油漏れと火災が緊急事態」だったとしても「油漏れや火災の原因となる業務活動(環境側面)は何なのか?」の議論は、ほとんどされていないケースが多かったように思います。

 

また、規格では「合理的に予見できる緊急事態を想定し、その想定に対する対応手順を規定し、定期的に対応手順をテストして妥当性を確認しなさい」と規定しています。

しかし、これについても、多くの組織は「対応手順で規定されている手順の訓練は実施していても、手順自体が想定した緊急事態の発生による影響を最小限に食い止めるべき手順として妥当なのか否かの検証」は、されていないケースが多かったと思います。

 

20172月に発生したアスクルの倉庫火災ですが、最近の報道では、

2階と3階にあった防火シャッターのうち60%余りが、正常に閉まっていなかった

◆シャッターの配線が焼けたり、ショートしたりしたことなどが原因とみられる

◆国は今後、配線の防火対策を検討することにした

◆各防火シャッターに信号を送る配線は1系統しかなかった

◆近くの火災報知設備が作動する前に、配線が焼けたり、ショートしたりして多くの防火シャッターに信号が届かず、一部のシャッターしか作動しなかった可能性がある

といったことが、現場検証結果からわかってきたそうです。

 

技術的な詳細はわかりませんが、要は、

「防火シャッターに信号を送る配線は1系統しかなく、配線がダメになると必要な火災報知設備が作動しない」

ということだったようです。

つまり、大規模倉庫の場合は、「火災報知設備のシステムや配線部分の耐熱性構造」といった設備的な改善をしなければ、火災という緊急時に本来の防火機能が半減するということなのです。

 

この「火災報知設備システム」に関することは、「アスクル」という「火災報知設備を使用するユーザーサイド」では検証することが難しく、改善すべきは「火災報知器メーカー」でしょう。

ただ、結果論ですが、アスクルでも、定期的な火災訓練の中で、単純に「防火シャッターが稼働するかどうかの検証」だけでなく、巨大倉庫施設であることから「防火シャッターが稼働しなかった場合の対応策」も考慮すべきだったのかもしれません。

 

話を戻しますが、個人的には「アスクルの倉庫火災」は予見できても「防火シャッターに信号を送る配線がショートして信号が届かずシャッターが閉まらなくて火災が増幅する事態」という想定は、アスクル火災が発生するまでは「合理的に予見できなかった」と考えてよいと思います。

 

逆に、厳しいようですが、「合理的に予見すべき」は、「倉庫を設計した企業」と「火災報知器メーカー」ではないかと思います。

彼らにとって、巨大倉庫におけるこうした事態は、合理的に予見できたはずで、環境マネジメントシステム的には「組織が環境を及ぼすことができる環境側面」と考えることができます。

 

ISO認証機関で、アスクルの審査を担当した機関が審査の妥当性を検証することはもちろんですが、「巨大倉庫の設計や報知器メーカー」の審査を担当する機関(やその審査チーム)は、こうした点(例:配線の防火対策)もきちんと考慮しているかを審査の中で確認していくべきだし、審査員への指示や教育も認証機関のマネジメントシステムとして組み込んでいくべきことなのだと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ537号より)

 

 

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author:有賀正彦, category:ISOマネジメントシステム全般, 07:45
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